物質が介在しなくても、脳が反応する
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ギャンブル依存症とは、ギャンブルやゲームにハマる依存症だ。
依存症には、薬物依存(物質依存)と行為依存と関係依存の3つがあるが、ギャンブル依存症は、薬物が介在しない行為依存だ。
そのため、何が人を依存症にするのか、なかなか良く分からない事が多かった。
物質依存の場合は、物質が神経に働きかけるから、ハマる理由は化学的にわかりやすい。
たとえばタバコに含まれるニコチンは、強い神経毒で、神経を麻痺させる。
神経を麻痺させることで、不安や苦痛から一時的に解放する。
酒やアルコールは、弱い神経毒で、神経を麻痺させることによって、不安やイライラが軽減する。
ところがギャンブルやゲームは、そういった物質的なモノがない。
なのにタバコや酒やアルコールのような依存症になってしまうわけだから、一体なぜなのか分からなかった。
ところが20世紀末に脳内の血流量を、コンピュータ・グラフィックス(CG)で表せるようになって、様々なことが分かってきた。
脳というのはたくさんの神経細胞と、絶縁体のグリア細胞(脂肪)でできているが、活動している神経付近の毛細血管には、血液が流れ込む量が増えるという。
これを精密な磁気センサー(fMRI)で読み取り、それを高性能パソコンでCG化するわけだ。
その結果、砂糖などの甘いものでも、タバコや酒やアルコール同様、脳の中の同じ部分が活性化したり、物質が関与していなくても、同じように脳が反応することが分かった。
報酬をもらえるかどうか、決まる瞬間に興奮する
ギャンブル依存症がなぜ起こるのか。
ケンブリッジ大学のシュルツが行ったサルに赤色と緑色のマークと、シロップを連合学習させた実験に、その一端が垣間見える。
この実験で、まず最初に、モニターに緑色のマークを映しだし、2秒後に、ノズルからシロップを出す。
つまり緑色のマークと、シロップを関連づけて学習させる。
この時点でサルの脳は、緑色には反応せず、シロップをなめたときに反応する。
しかしこれを何度か繰り返すと、サルは緑色とシロップの間に、関連があることに気づき、反応が変化する。
つまり緑色のマークがモニターに出た瞬間に脳が興奮しはじめるのだ。
これを「連合学習」と呼ぶが、緑色の印=シロップという風に覚えて、緑色のマーク自体に興奮するようになる。
そして次に赤色のマークを出し、シロップを出さないという関連を作る。
つまり「緑色はシロップ」「赤色はハズレ」と言う風に分岐ルールを作るわけだね。
このとき、サルの脳は、緑を見たら興奮し、赤を見たら何も反応しなくなる。
このルールが定着したあとに、今度はシロップを出す条件をランダムにしてみる。
つまり緑色のマークが出てもシロップは出ない、赤色のマークが出た時にシロップが出る、と言う風に、対応関係を変えてみるわけだ。
そこでサルは緑のマークで興奮し、シロップが出ないことで落ち込む。
逆に赤のマークでは無反応だが、シロップが出たら興奮する。
この実験の最終段階では、青色のマークを見せて、50%の確率でシロップを出してみた。
そうすると、サルの脳は、青色のマークが消え始めるときに、一番興奮したのだ。
つまりシロップが出るか出ないか、それがハッキリする直前の瞬間に、脳が最大限に興奮していたのだ。
これがつまり「ギャンブル」の「快感」で、この快感を求めてみんな、ギャンブルに熱中するわけだな。