異性化糖が、砂糖依存症を激増させた?
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甘いものや炭水化物は、依存性が高い食品だ。
これは恐らく数百年以上前から、すでに依存性が高かったはずなのだが、砂糖依存症や炭水化物依存症が問題になり始めたのは最近の事だ。
キレる若者が問題になったのは1980年代くらいからだし、炭水化物の害が唱えられ始めたのも、1990年代の末くらいからだ。
つまり食品自体は数百年前からあったのに、問題になり始めたのはつい最近のことで、これは一体どういうことなのか。
一つの理由として挙げられるのが、60年代後半に日本で開発され、70年代からアメリカで爆発的に広まった異性化糖(いせいかとう)だ。
この異性化糖というのは、トウモロコシやジャガイモなどのデンプンを、酵素などでブドウ糖と果糖に加水分解し、さらにブドウ糖を果糖に変換して甘みを調整した甘味料だ。
コーラや炭酸飲料の成分欄を見ると、一番始めに「ブドウ糖果糖液糖」とか「果糖ブドウ糖液糖」とか「高果糖液糖」などと書いてあるのが異性化糖だ。
果糖の割合が多いほど甘みが強くなるが、果糖は40度以上では甘さが減る。
なので熱いコーヒーや紅茶には砂糖、冷たいコーラやソフトドリンクには異性化糖、というふうに使い分けが行われる。
この異性化糖技術は、通商産業省工業技術院で開発され、アメリカの企業に特許輸出されたものだが、キューバ危機で砂糖が入ってこなくなり、甘味料不足に陥っていたアメリカで一気に広まった。
そして今では、アメリカの甘味料のおよそ半分を、この異性化糖が占めるまでに大成長した。
依存症になりやすいモノの条件として、「手に入りやすい」というものがあるが、安くて甘いモノが簡単に手に入るようになったから、砂糖依存症・炭水化物依存症が、大きな問題になり始めたということらしい。
人工甘味料でも、脳は反応する
サトウキビ栽培の一大拠点だったキューバが社会主義化して、砂糖が入ってこなくなったアメリカ。
様々な新しい甘味料が開発され、安い甘味料の需要が極度に高まった。
そんなときに日本から技術輸出されたのが、異性化糖という甘味料の製法だった。
異性化糖は、サツマイモやトウモロコシなどのデンプンを分解して作る甘味料だ。
できる糖分も、ブドウ糖と果糖という、最も基本的な単糖類で、炭水化物を食べたときに吸収される直前の形で安全性は高い。
しかし、こういう技術が広まると、砂糖産業は壊滅的なダメージを被る。
というのもサトウキビが栽培出来なくても、デンプンさえあれば、安く大量に安く作れるからね。
なのでEUなどでは、砂糖産業保護のため、異性化糖の生産を割当制にしている。
ただ、いくら砂糖産業の政治力が強くても、肝心の砂糖が足りないのだから仕方が無い。
そのため70年代のアメリカでは、異性化糖が、ソフトドリンク用の甘味料として一気に広まった。
キレる若者やキレる子供が問題になり始めたのは、恐らくこの頃からだろうが、当時はまだ原因がわからなかった。
そのため、ビタミンが足りない、カルシウムが足りない、食物繊維が足りない、ウルサい音楽や映画がいけない、などと、様々な説が唱えられたものだった。
一方、90年代後半から爆発的に進歩した、コンピュータ・グラフィックス(CG)技術によって、脳内の血流量が観察出来るようになったことで、依存症のメカニズムが解明され始めた。
タバコやアルコールなどを飲んだときに、人間の脳がどう反応するのか詳しく分かってきた。
そして21世紀に入ってようやく、砂糖などの甘味料がタバコと同じように、脳を興奮させることが確認され、若者がキレるのは、依存症の離脱症状や禁断症状であることがハッキリした。
さらに脳を興奮させるのは、砂糖や異性化糖だけではなく、カロリーのない人工甘味料でも、同様に反応することも確認された。
つまり「甘み」こそが、依存の原因だったわけだ。