バイオ株は、なぜ人気化するのか
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春と秋は、バイオ関連株が賑わうことが多い。
もちろん毎年賑わうというわけでもないのだけれど、数銘柄は必ず人気化して話題を集めている。
バイオベンチャーと言えば、毎年赤字を数十億円も垂れ流し、毎年第三者割当増資で数十億円の資金を調達する。
なのになぜ、そんなに関心を集めるのか。
それはなんだかんだ言って、バイオベンチャーがニュースを出し続けるからだろう。
バイオベンチャーは、新しい薬を開発するベンチャー企業のことだけれど、話題に事欠かない。
まず世の中には様々な病気があって、様々な症状がある。
必要な薬も一種類ではなく、複数の薬が必要になる病気も多い。
我々素人からすると、薬と言えば病気そのものを治す薬をイメージするが、その薬の副作用を抑える薬も必要だ。
例えば効果的な抗がん剤があったとしても、治療中に疼痛を起こすという副作用があれば、それを抑える薬が要る。
抗がん剤の効果は減らさずに、痛みだけを抑えるような特別な鎮痛剤が必要になることもある。
また病気の検査のための装置や検査薬の開発も、バイオ関連企業の開発テーマだ。
病気を早期発見するための機械や検査薬があれば、医療技術の発展に寄与する。
遺伝子を調べて、なりやすい病気を調べるなんてことも、予防医学では役に立つ。
こういう風に、一口に創薬だとかバイオ関連だといっても、物凄く範囲が広いのだ。
そして新薬が開発されて世の中に出るまでには、様々なステップがあって、難関が待ち構えている。
バイオベンチャーは、そのステップを一歩ずつ登っていき、最後には開発した薬を世の中に出す。
その一つ一つのステップをクリアする度に、IR情報を出すため話題に事欠かない。
バイオベンチャー 黒字化までの道のり
バイオベンチャーが黒字化するまでの道のりは、非常に長い。
というのも世の中に新しい薬が出るまでには、少なくとも10年以上の年月を必要とするからだ。
新薬を販売開始することを、上市(じょうし)と呼ぶが、上市に至るまでに次のような段階を経る。
新薬の上市までの段階
項目 | 行われること | 平均的な必要年月 |
---|---|---|
候補物質(パイプライン)の探索 | 化合物ライブラリの作成、標的分子の探索スクリーニング、化合物修飾特許出願 | 2~3年 |
非臨床試験 | 薬効薬理試験、薬物動態試験、安全性薬理試験、毒性試験 | 3~5年 |
臨床試験 | 治験届け、臨床試験(第I相・第II相・第III相) | 3~7年 |
承認申請・上市 | 製造販売申請、審議、販売開始 | 1~2年 |
これらの様々な試験を一つずつクリアして、実際に患者への投与を行う第3相の臨床実験まで辿り着き、そこで有効性が確認されて初めて商品化されることになる。
ここまで辿り着くためには、なんと数百億円から数千億円の費用が必要になる。
そして上市に近付けば近付くほど、バイオ株の売買は盛り上がる。
ただ最後の段階まで来て、有意性が認められなくて、開発失敗ということもよくある。
2016年夏前のアキュセラ・インクの新薬開発失敗での暴落は酷かったね。
アキュセラショックの日足チャート 2016年
第3相の臨床試験結果の発表が間近だということで、春頃から株価が上昇して3倍になった後、6日連続ストップ安で株価がなんとピークの7分の1まで下がった。
こういう風に、期待されていた薬が治験失敗に終わると、バイオ株ブームは一気に冷めてしまい、他のバイオ株も投げ売りされてしまうことも多い。